#1: 集合
集合と元
定義 1.1 集合
- 集合 (set) とは, ものの集まりである.
- 集合を構成する個々の「もの」を 元, あるいは 要素 (element) という.
定義 1.2 帰属関係
-
$x$ が集合 $A$ の元であるとき, $A$ は $x$ を 含む, あるいは $x$ は $A$ に 含まれる, 属する ($x$ belongs to $A$, or $x$ is in $A$) といい, $x\in A$, あるいは $A\ni x$ で表す.
-
$A$ が $x$ を含まないとき, $x\not\in A$, あるいは $A\not\ni x$ で表す.
集合の定義について
- ある元が集合に含まれているか否かは明確でなければならない.
例えば, 「大きい整数全体の集まり」などは, 「大きい」が主観的であり明確でないので集合として認められない. - 上記の集合の定義は厳密ではなく, 例えば「全ての集合の集まり」などの集合にならないものが存在することが知られている (Russell のパラドックス).
現代では 公理的集合論 (axiomatic set theory) により経験的に矛盾のない公理が知られているが, 本来の入門の趣旨から外れない為にも naive な定義を認めることにする.
例 1.3 空集合
元を 1 つも持たない集合を 空集合 (empty set) といい, $\emptyset$ であらわす.すなわち, 任意の元 $x$ に対して $x\not\in\emptyset$.
例 1.4 自然数, 実数など
以下は全て集合であり, 慣例的に右の黒板文字で表される.
| 集合 | 文字 |
|---|---|
| 自然数全体の集まり | $\mathbb{N}$ |
| 整数全体の集まり | $\mathbb{Z}$ |
| 有理数全体の集まり | $\mathbb{Q}$ |
| 実数全体の集まり | $\mathbb{R}$ |
| 複素数全体の集まり | $\mathbb{C}$ |
例 1.5 開区間, 閉区間
$a, b$ を実数としたとき, 以下は全て集合である.
| 集合 | 用語 | 表記 |
|---|---|---|
| 閉区間 | $a\le x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体の集まり | $[a,b]$ |
| 開区間 | $a\lt x\lt b$ を満たす実数 $x$ 全体の集まり | $(a,b),\,]a,b[$ |
| 半開区間 | $a\lt x\le b$ を満たす実数 $x$ 全体の集まり | $(a,b],\,]a,b]$ |
| 半開区間 | $a\le x\lt b$ を満たす実数 $x$ 全体の集まり | $[a,b),\,[a,b[$ |
包含関係
定義 1.6 包含関係
-
集合 $A$ の任意の元が集合 $B$ に含まれるとき, $B$ は $A$ を包む, 含む, 包含する, あるいは $A$ は $B$ に 包まれる, 含まれる, 包含される ( $A$ is contained in $B$, $B$ contains $A$, or $B$ is a superset of $A$ ) といい, $A\subset B$, あるいは $B\supset A$ で表す.
-
$A$ が $B$ に包まれないときは $A\not\subset B$, あるいは $B\not\subset A$ で表す.
-
集合 $A$ に包まれるような集合を $A$ の 部分集合 (subset) という.
「含む」について
$x\in A$, $B\subset A$ はどちらも慣例的に「含む」と呼ぶことがあるが, 前者は $x$ が元, 後者は $B$ が集合であることに留意しなければならない.同値関係
定義 1.7 同値関係
- 集合 $A$, $B$ に対して $A\subset B$ かつ $B\subset A$ であるとき,
$A$ と $B$ は 等しい (equal) といい, $A=B$ で 表す.
- $A=B$ でないとき, $A\neq B$ で 表す.
- $A\subset B$ かつ $A\neq B$ であるとき, $A$ は $B$ の 真部分集合 (proper subset) であるといい, 真部分集合であることを強調する場合, $A\subsetneq B$ あるいは $B\supsetneq A$ で表す.
- (真部分集合と区別するために $A\subset B$ を $A\subseteq B$ あるいは $B\supseteq A$ で表す流派もある.)
例1.8 部分集合と真部分集合
任意の集合 $A$ に対して, $\emptyset\subset A,\,A\subset A,\,A\subsetneq A.$例1.9 元の重複
同じ元が複数含まれている集合は, 重複を排除した集合と等しい. 例えば, $\{a, a\} = \{a\}.$例1.8について
$\emptyset$ は元を1つも持たない集合であり, 包含関係の定義から $\emptyset\subset A$ となるのは少し奇妙に思える読者がいるかもしれない. この疑問は次ページの 論理 によって解消される.集合の構成
集合を表現するための表記には 2 つの方法がある.
- 1つ目は 外延的記法 (roster notation) であり, 元を 1 つずつ列挙していく記法である.
- 例えば, 10 以下の素数全体の集まりは以下のように表される. $$\{2,3,5,7\}$$
- 元の並びが規則的で明白な場合は, $\dots$ で省略する場合がある.
例えば, 100 以下の正の整数全体の集まりは以下のように表される. $$\{1,2,3,\dots,100\}$$
- 2つ目は 内包的記法 (set-builder notation) であり, 変数 (variable) に関する条件により定める記法である.
- 変数は条件に関係する元である. 例えば「$x$ は有理数である」という条件が与えられたとき, $x$ が条件の変数である.
- 条件は真偽が明確に定まらなければならない. 例えば「$x$ は大きい数である」という条件は「大きい」という部分は個々の主観によるので, 内包的記法の条件として適用できない.
- 変数 $x$ についての条件を $P(x)$ としたとき, 内包的記法は $\{x|P(x)\}$ のように表す.
-
$x$ の範囲 (定義域) として $x\in A$ と条件が与えられるとき, $\{x\in A|P(x)\}$ のように書くこともできる.
-
例えば, 100 以下の正の整数全体の集まりは以下のように表される. $$\{x\mid0\lt x\leq100, x\in\mathbb{Z}\},$$ $$\{x\in\mathbb{Z}\mid0\lt x\leq100\}.$$
-
例 1.10 空集合
$\emptyset=\{\}.$例 1.11 閉区間, 開区間
- $[a,b]=\{x\in\mathbb{R}\mid a\le x\le b\},$
- $(a,b)=\{x\in\mathbb{R}\mid a\lt x\lt b\}.$
元と集合の違い
元 $a$ とその元のみからなる集合 $\{a\}$ は異なるものとして区別することに注意されたい.集合族
集合を元とする集合, つまり集合の集合を 集合族, あるいは 集合系 (family of sets) という.
例 1.12 べき集合
$A$ の部分集合全体の集合は集合族である.この集合族を べき集合 (power set) といい, $\mathcal{P}(A)$, あるいは $2^A$ で表す.