$(-1)\times(-1)=1.$
環の定義
$(-1)\times(-1)=1$ を証明するにあたって, いくつかの性質は公理, すなわち前提として認めることにする.
ここでは一般的な代数的構造として 環 (ring) であることを仮定するが, 性質としてはどれも通常の計算で無意識的に, 当然のように使うものばかりである.
環
集合 $R$ に対して二つの閉じた演算 $+$ と $\times$ ($a\times b$ は以降 $ab$ と略記する) が定義されていて, $R$ の任意の要素 $x,y,z$ において次の性質を満たすとき, $R$ を環という.-
$(x+y)+z = x+(y+z),$
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$x + 0 = 0+x = x,$
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$x+y=y+x,$
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$[x+(-x)=(-x)+x=0]$ であるような $R$ の要素 $-x$ が存在,
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$(xy)z=x(yz),$
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$1x = x1 =x,$
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$x(y+z)=xy+xz,\,(x+y)z=xz+yz.$
閉じた演算
「閉じた演算」とは演算の結果もまた $R$ の要素であるという意味である.準備 (補題)
補題1
単位元 $0$, $1$ は一意に定まる.証明
加法単位元を $0,0’$ とすると, 公理2より $0 = 0 + 0’ = 0’$ である. よって, $0=0’$ より加法単位元は一意である.乗法単位元も同様に $1,1’$ とすれば, 公理6より $1 = 11’ = 1’$ であるから一意である.
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補題2
$R$ の任意の要素 $x$ において, $x$ の逆元 $-x$ は一意に定まる.証明
$x$ の逆元を $-x, (-x)’$ とすれば. $$ \begin{align*} -x =&(-x)+0x&\quad\text{(公理2)} \\ =&(-x)+(x+(-x)’)x&\quad\text{(公理4)} \\ =&((-x)+x)+(-x)’x&\quad\text{(公理1)} \\ =&0+(-x)’x&\quad\text{(公理4)} \\ =&(-x)’&\quad\text{(公理2)} \end{align*} $$ より $-x=(-x)’$ であるから一意である.■
補題3
$R$ の任意の要素 $x$ において $-(-x)=x.$証明
公理4より $x+(-x)=0$ であるから, $-x$ の逆元 $-(-x)$ は $x$, よって $-(-x)=x$.■
補題4
$R$ の任意の要素 $x$ において $0x=x0=0.$証明
$$ \begin{align*} 0x =&(0+0)x&\quad\text{(公理3)} \\ =&0x+0x.&\quad\text{(公理7)} \end{align*} $$ $0x+0x=0x$ より $0x$ は単位元 $0$ の性質 (公理2, 補題1) を満たすので, $0x=0$.$x0=0$ についても同様の証明で示される.
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補題5
$R$ の任意の要素 $x$ において $(-1)x=x(-1)=-x.$証明
$$ \begin{align*} &0x=0&\quad\text{(補題4)} \\ \Longrightarrow& (1+(-1))x=0&\quad\text{(公理4)} \\ \Longrightarrow& 1x+(-1)x=0&\quad\text{(公理7)} \\ \Longrightarrow& x+(-1)x=0&\quad\text{(公理6)} \\ \end{align*} $$ 公理4より $x$ の逆元 $-x$ は $(-1)x$, よって $(-1)x=-x$.$x(-1)=-x$ についても同様の証明で示される.
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いよいよ証明!
定理
$(-a)(-b)=ab.$証明
$$ \begin{align*} &(-a)(-b)& \\ =&(-1)a(-1)b&\quad\text{(補題5)} \\ =&(-1)(-1)ab&\quad\text{(補題5)} \\ =&(-(-1))ab&\quad\text{(補題5)} \\ =&1ab&\quad\text{(補題3)} \\ =&ab.&\quad\text{(公理6)} \\ \end{align*} $$■
系
$(-1)(-1)=1.$証明
公理6, 定理より $(-1)(-1)=1\times1=1.$■
証明完了!